『呻吟語』の言葉9
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恩恵は当に(あま)り有らしむべく、威刑は窮む可からざるなり。


  権の在る所は、利の帰する所なり。


  任とは(まか)するなり、其便宜に(まか)せて信任して(せい)を責むるなり、若し牽制束縛すれば任に非ず。


  凡そ戦の道は、生を貪る者は死し、死を忘るる者は生き、勝に()るる者は敗れ、敗を恥づる者は勝つ。


  礼繁ければ則ち行はれ難く、法繁ければ則ち犯され易い。


  民に廉恥の心少きは上の徳の乏しきことを知るを得べく、民に敬畏の念少きは上の威光の薄きことを知るを得べし。


  天の君を立つるは、以って民の為めにするなり。


  専欲は為り難く、衆怒は犯し難し。


  天の将に()けんとするや先づ晦し、物極まれば則ち反る、極まらざれば則ち反らざるなり。


  窮寇は追ふ可からざるなり、遁辞は攻む可からざるなり、貧民は(おど)す可からざるなり。


  天下動乱して多事なる時は、君子の真実なる情態を明かに知り得べし。


  善く世に処する者は、人の自然の情を得んことを要す。


  礼重ければ法軽く、礼厳なれば法恕なり。


  多事の(とき)に当りて、才無きの君子を用ふるは才有るの小人を用ふるに如かず。


  福は禍無きよりも大なるは莫し、禍は福を求むるよりも大なるは莫し。



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