『呻吟語』の言葉10
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天下国家・身の敗亡するは、積漸の二字を出でず、積の微・漸の始は為めに寒心す可きかな。


  火の大いに()ゆるものは(けむり)無し、水の順流するものは聲無し、人の情平かなるものは語無し。


  水の千流萬派は一源に始まる、木の千枝萬葉は一本に出づ、人の千酬萬応は一心に発す、身の千病萬症は一臓に根ざす、故に病は一を治めて而して千萬皆除かれ、政は一を埋めて而して千萬皆挙がる。


  萬事必ず故有り、萬事に応ずるに必ず其故を求む。


  鏡は空にして我相(がそう)無し、故に物を照らすこと分毫を(たが)へず。


  小人を処するは、遠ざけず近づけざるの間に在り。


  上等の手段は賊を用ふ、其次は賊を(とら)ふ、其次は賊を()着して走る。


  極まれば必ず反るは、自然の勢なり。


  人身、内堅くして外密ならば、何の外咸か能く入らん。


  君子を用ふるは其才に当るに在り、小人を用ふるは其毒を制するに在り。


  政を為すには、門察を以って第一の要と為す。


  民風を変ずるは易く士風を変ずるは難し、士風を変ずるは易く仕風を変ずるは難し、仕風変ずれば天下治まる。


  水は以って苗を潤す、水多ければ則ち苗腐る、治を為すに一に寛なるは民の福に非ざるなり。



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